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- 山行記録

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執筆 : 
 2008-9-10 22:20
日程    2008年9月10日(水)?11日(木)
山域    南アルプス 北岳バットレス第四尾根
山行形態  アルパインクライミング
参加者   〔CL,食当2〕木村 〔SL〕門脇 〔装備,食当1〕古屋 〔記録〕平川

 《 極上のクライミング 》・・と、タイトルを付けたくなるような2日間だった。
 北岳バットレス第4尾根は最も人気の高いアルパインルートのひとつである。???級前後の易しいルートながら、総数9?10ピッチのマルチが可能で、フェース、クラック、リッジ、懸垂下降と変化に富んでいる。必然的に多くのクライマーが集まり、シーズン中は順番待ちが起きる程だ。しかし我々4人は爽やかな秋晴れの中、この岩場を完全に独占して何とも夢のような2日間を過ごす事が出来た。

 9/10(水)AM7:00に南武線 谷保駅に集合したのは門脇、木村、平川の3人。古屋さんとは夜叉神峠で待ち合わせている。夜叉神峠?広河原間はマイカー規制が入っているため、ここからは乗り合いタクシー(\1.000/ 1人)で広河原に向かう。広河原を10:50に出発し御池小屋を目指して登山道に入る。始めは緩やかな登りだが次第に急登になり、結構キツイ登りだった。御池小屋には13:00に着いた。私自身は13年ぶりの再訪で、小屋も新しくなり、以前の印象とは随分違った所になっていた。
 早速、広々としたサイトにテントを張り、雲ひとつない爽やかな秋晴れの下でゆっくりとした時間を過ごす。初日の今日は明日の取り付きであるbガリー大滝を偵察する以外に予定無しだ。ゆっくりとした昼食後、14時過ぎに偵察に出掛けた。取り付きであるbガリー大滝は大樺沢を1時間程登って出合うバットレス沢の上部にある。そのバットレス沢と、C沢の見極めをした所で偵察は終了とした。
 テントに戻りバットレスを眺めながら飲むビールは最高に美味い。(ちなみに小屋で売っているビールは500mlが700円、350mlが500円であった)。幕場には10張り程のテントがあり、その内クライマーは2パーティーである。明日の出発は我々より遅く、しかも初心者がいるので先に行ってくれと言う。願ったり叶ったりであった。
 翌朝は3時に起床し4時に出発した。昨日のバットレス沢には5:00着、取り付き点になるbガリー大滝には6:00に着いた。さあ、いよいよ念願のバットレス登攀だ。予報では昨日までであった晴天は良い方に外れ、雲ひとつない紺碧の青空である。つるべで攀るので、門脇?木村、古屋?平川がペアになり6:15登攀開始した。最初のbガリー大滝は2ピッチの易しいクラック+フェースの登攀である。難なく登って四尾根への横断バンドを探したがこれがどうも分からない。もう少し上ではないかとガレのルンゼを詰めて行くが、痩せ尾根のコルに出てしまった。落石が多く結構冷や汗もののルンゼであったが、そこには我々同様
に間違えて登ってきたパーティーがいた事を物語る懸垂用の支点が幾つかあった。


 尾根の反対側にはC沢を挟んで四尾根の取り付きを示す『4』の赤ペンキも見える。ここは、先縦者に倣って懸垂で降りるしかない。
 ちょっと寄り道したが四尾根には8:00丁度に取り付く事が出来た。ここから先がアルパインクライミングの世界だ。四尾根1ピッチ目のクラック(?+)を古屋リードで攀る。40m程ロープを伸ばして平川がセカンドで続く。門脇組は門脇リード、セカンド木村で続く。その後は両組ともリード&フォローの繰り返しで登る。岩は硬くフラットソールのフリクションは抜群で僅かなスタンスでも立ち込む事が出来る。
 四尾根のポイントである『マッチ箱のピーク』には9:30に着いた。ここは10mの懸垂でクラックの走る左フランケ側に降りる。ここのバンドで暫し休憩を取った。50cm程の狭いバンドの下は200?300mはありそうな立った壁だが、日当たりの良いバンドに座って妙に落ち着いた気分(満ち足りた気分)が心地良かった。見上げれば抜けるような雲ひとつ無い青空、からりと乾いた空気に残暑の日差しも心地良く感じられる。『極上のクライミングをしているな』という実感があった。ここからフェースを古屋、木村のリードで登り返し、次のDガリー奥壁の最終ピッチとなるチムニーを登るが、平川は快適な高度感のこのピッチのリードが一番心地良かった。大テラス(終了点)には11:30到着。bガリー大滝からは約5時間の登攀を我々だけで壁を独占して楽しむ事が出来た。恐らく年に何度も無い、全ての面で最適な条件の基、アルパインクライ
ミングを堪能することができた。
 一休みして頂上には12:20着。富士山から奥秩父、手前には鳳凰三山と甲斐駒、そして遠く槍ヶ岳まではっきりと見ることが出来る。暫く休んで草すべりを一気に下り、御池小屋には14:00に降りた。テン場からは後から登りだした隣のテント組が丁度マッチ箱を越えている所が見える。テントを撤収して15:00下山開始。広河原には16:45に到着し17:15の乗り合いタクシーで夜叉神峠の駐車場に戻った。芦安の立ち寄り湯(¥500)と白根IC近くのファミレスで軽く反省会をして帰路に着いた。










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 2008-9-10 12:00
日程:2009年9月10日(水)?11日(木)
山域:北岳バットレス 第四尾根
山行形態:岩登り
メンバー:門脇、古屋、平川、木村


四尾根取付き最初のクラックを登る


マッチ箱のコルから懸垂下降し一息つく


カドワックス、30年ぶりにバットレスを登る


北岳山頂!

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 2008-9-7 23:10
日程:2008年9月7日(日)
山域:丹沢 セドの沢左俣
山行形態:沢登り(訓練山行)
メンバー:戸田(CL)、羽生田(SL)、両角《充》、両角《夏》、白川、片倉、砺波(記録)

時程
8:00渋沢 ? 8:30大倉バス停 ? 9:20戸沢出合10:09 ? 10:45 水無川本谷F111:30 ? 12:00 13m大滝 ?14:00 8m
? 14:20書策新道 ? 16:15 8m ? 16:45書策小屋17:00 ? 18:00 戸沢出合 ~18:45大倉バス停

 山行当日は、午後からにわか雨の予報になっていたが、訓練なので安易に中止にしないと念を押され、天気予報を気にしないようにして渋沢に集合した。
 この時点の気温28℃。一時期よりは涼しくなったが、まだ暑い。前日の丹沢は動かない雨雲のせいでかなり降ったみたいで、山裾に雲をまとっていたが、恒例のバスの中でのアメダスチェックでも関東地方はごく弱い北風が吹いているのみで、大気の収束もなかったのでまあ最初は降らないだろうと勝手に推測した。大倉の吊り橋から水無川を見ても水は澄んでおり、増水もしておらずこの時点では一安心。
 9時20分に戸沢の出合に到着し、装備をセットする。慎重に装備をチェックするのも大事なことだが、素早くセットすれば、早く山に登れるのにと、この時間がいつも非常にもどかしい。ここで、両角《夏》さんの、カドワックス製沢シューズを見せてもらった。ソールのつま先がラバーで、それ以外はフェルトとなっており、現在最高の沢靴と考えられる。しかし、元キャラバン製とは思えない色づかいに、カドワックスの偉大なる才能の無駄遣いぶりを感じる。

 本沢の鎖がついている堰堤の上で、ナイロンパンツをたくし上げたところ、第1ヤマビル発見。実は、初めてヤマビルを見た。小さな生き物なので、これに気づくのは至難の業である、と思った。ヤマビルは、ハンマーですりつぶした。新しいハンマーの使い方を発見し、ちょっとうれしかった。暑いし、荷物が増えるのでネオプレーンのスパッツは家に置いたままだったが、次回の山行からは暑くても持って行くこととした。

 楽しそうに水線を遡行している先行パーティをうまい具合に追い越して本谷のF1に先にとりつく。気温20℃。リードで登り、支点を工作。久々だったため、実は、ビレイがかなり怪しくて、後から上げた自分のザックは、ビレイデバイスなしでザイルを引っ張りかなりつらかった。なんかつらいぞと、はっとして、ATCを装着した。焦ってハーネスから取り出したため、ハーケンを棚に流してしまった。今、振り返って、流したのがハーケンでよかったとは思うが、ハーネスに取り付ける順番を考えなければならない。


 次の13mでも支点のセットでまごつく。ハーケンがうまくリスにかまなかったのだけど、やっぱり段取りが悪い。
 ちょっと行ったところの書策新道との交差点で両角《夏》さんとはお別れ。気温20℃。だいぶ高度が上がっているのに、気温が下がらない。湿度が高いことを示しており、雨の危機が迫る。ここからは、残りのメンバーでの遡行となる。ここで第2ヤマビル発見。しかし、払って石の間に落ちてしまい殺すことはできなかった。8月に遡行した羽生田さん外のメンバーはルートミスをしたらしく今回はリベンジを兼ねていた。しかし、前日の雨の影響のためガレ場からも水が出ており、分岐の判断を誤り、またもやルートミスをしてしまった。確信が持てるところまで戻り、もう一度素直に遡行したところ、ルートミスをしなかった。突き上げた稜線には、鹿が食べないマルバタケブキしか生えていなかった。他に下草がなく全体を見渡せたため、フキの葉っぱである名前の由来に納得。

 書策小屋で装備を外す。ほっとする反面、やっぱりこの時間がもったいない。稜線にはフジアザミがぽつんと咲いていた。これも鹿が食べなそう。食害は1300mの稜線まで波及している。

 書策新道との交差点に忘れ物(笛)をしたことが発覚したため、選択の余地なく書策新道で下山。北の方から徐々に雷が響き渡るようになる。無事、忘れ物を回収し、戸沢出合まできたところで、とうとう雨が降り出し、林道が川になる。
 日が落ちて真っ暗になって、川になった林道を、走ったり、早歩きで45分ほどで大倉に到着。帰りは、電車が止まっているので、ゆっくり飲んでいたら、ちっとも復旧せず、大変な目に遭ってしまった。電車が止まったときは、酒など飲まず、早めに帰る方がよかったのかもしれない。

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msc_kiroku1 2008-9-6 20:00
日程:2008年9月6日(土)
参加者:須藤(CL、記録)、神戸、高森(会員外)
山域:水無川流域 源次郎沢
行程: 8:00 渋沢駅集合、バスにて大倉?戸沢出合
    10:00 戸沢出合より遡行スタート?13:45 花立山荘?15:30 大倉

 3人とも、源次郎はもう何回か入渓しているが、足慣らし、力試しということで2日前に行くことを決めた。
 朝家を出る時、自宅の狛江近辺では雨がぱらついており天気が心配だったが、電車が渋沢方面に近づくにつれ晴れ間も見え、終日まづまづの天気だった。
 入渓して最初の10m大滝は高森さんリード、神戸さんがフォロービレイする。神戸さんがメインロープ一本で岩にアンカーの支点を取る。私が知っている(行っている)やり方とは異なるが、いきなりメインロープだけでアンカーを工作したのにはビックリ。フォロービレイのロープ捌きも手馴れたもので滑らかである。


高森さんも久しぶりの沢だが、危なげなくリードする。その後もこの二人のコンビでリード、フォローを3ヶ所で行い、見張り役(実は見張られ役か?)の須藤の出番は5m滝の1ヶ所のみ。ミッテルで上がるのは久しぶりで何故か分からないがとても怖い。神戸さんは、MSCでは初めての山行ということで遠慮をされたのか、リードはされなかったが、クライミングの動きはスムーズで手足、リーチが長く見えたのが印象的だった。行程中、4ヶ所でロープを出したわりには、もたつくことなくさっと詰めあげられた。

 ちょっとは面倒見らしき事をするつもりだった自分だが、殆ど出番は無く、変な中年男が若い女性に混じって登っただけで一体何だったのだろうという感もある。それどころか自分がリードしたところで、一瞬Zクリップをやってしまい、反省することしきりである。家で基礎の再確認が必要と分かっただけでも収穫か?言い訳がましくて情けない。
 ともあれ3人でサクッと登れて気持ちの良い山行だった。

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blogmaster 2008-8-23 20:50
日程:2008年8月23日(土)?26日(火)
山域:槍ヶ岳 北鎌尾根
山行形態:岩稜
メンバー及び役割:木村(CL、食当、記録)、羽生田(会員外、SL)

記録:
8/24 中房温泉(6:00)?合戦小屋(8:10)?燕山荘(9:20)?大天井岳分岐(11:30)?大天井ヒュッテ(12:15)?貧乏沢下降点(12:55)?天上沢出合(14:55)?北鎌沢出合手前(15:40)幕営
8/25 北鎌沢出合(5:05)?右俣出合(5:30)?北鎌のコル北東のピーク(9:45)?コル(10:40)?2749mのピーク(12:00)?独標(14:10)?ビバーク地(16:45)
8/26 ビバーク地(5:50)?北鎌平(7:15)?槍ヶ岳山頂(9:15)?槍岳山荘(10:45)?上高地(16:05)

 8月23日夜、西新宿のバスターミナルに集合し夜行バスで穂高へ向う。天気予報はあまりよくない。8月24日4:00に穂高に到着、予約しておいたタクシーに乗換え中房温泉へ向う。かなり激しい雨が降っている。5:00には中房温泉に到着し、トイレの中で身支度を整える。次第に雨は小降りになり6:00にはなんとか出発することができた。今日は日曜日なので下山してくる人が多い。ザックにヘルメットをぶらさげているのを見て「北鎌ですか?」と声をかけられる。8:10には合戦小屋へ到着。名物のスイカを食べる。美味しい。燕山荘には9:20に着いた。この頃には天気もかなり回復し周囲の景色が少しずつ見えるようになってきた。ここからは大天井ヒュッテまで快適な縦走路だ。なぜかサルの大群が岩峰に集っている。

北アルプスでこういう光景を見るのははじめてだ。縦走路とはいえ荷物が重いのでなかなかつらい。休み休み歩を進め12:15に大天井ヒュッテに到着。この頃には晴れ間もみえはじめ、私達はなんてツイテルのだとはしゃぎあう。
 休憩後いよいよ貧乏沢下降点へむけて出発。7月に下見をしておいた下降点は「貧乏沢入口」という札がありとても分かりやすい。入ってみると踏み跡はかなりしっかりしているのでルートに迷うことなく降りられそうだ。

少し前に北鎌に行った古屋さん・中山さんのアドバイスどおり左岸沿いの巻き道を下っていく。下るほどにどんどん沢らしくなってゆき、天気もどんどんよくなって気持ち良く沢下りを楽しめた。約2時間ほどで天上沢出合に到達。天井沢は広く、北鎌尾根へ一歩近づいたこともあり興奮する。ここからは今日の幕営地を探しながら、できるだけ北鎌沢出合まで近づくことにする。キョロキョロしてるといくつか幕営可能な場所がある。なんとなく歩いていくと北鎌沢出合付近まできてしまった。ちょうどそこにロープを張って寝袋等を干している人がいた。その近くに良い場所があったので今夜はそこにテントを張ることにする。ザックを置いて北鎌沢を偵察し、先客に挨拶をする。ガイド志望の単独行で2日間北鎌のコルでビバークし今日下降してきたそうだ。かなり時間があるらしく今回の山行で2回北鎌尾根を登る予定だとか。世の中いろんな人がいるものである。
 テント設営後、焚火に取掛るがなかなか火がつかない。もたもたしている私達をみて、さっきのガイド志望の人が手伝いに来てくれた。それでも火はつかず、半ば諦めかけた頃、1時間ほどしてようやく火が点いた。焚火に関してはまだまだ授業料が必要だ。今晩のメニューは穴子寿司、たまごスープ、ウィンナー。夜になると霧が
立ち込めてきて明日の天気が少々気になる。20:00に就寝。
 8月25日3:00起床。ラーメンを食べ身支度を整える。5:00には出発し北鎌沢出合から沢を遡行していく。

しばらくすると二俣になる。あきらかに左俣のほうが水量が多いが、ガイドブック通り右俣に入る。1時間ほど遡行すると水流がなくなったので水を汲むことにする。コルの手前まで水が出ていると聞いていたが心配なので早めに水をとる。木村が3ℓ、羽生田さんが2ℓ確保した。右俣の最後の詰めは沢からはずれた踏み跡が歩きやすいと聞いていたので、それを探しながら歩く。少々早い気もするが右側に明瞭な踏み跡がでてきた。これではないかと思い進んでみる。どんどん上がっていくと正面の岩壁に新しい赤いシュリンゲがかかっていた。懸垂の支点のようだなと思いつつさらに登っていく。今思えばここで疑って引き返すべきだったのだ。中山さんからもシュリンゲのことがアドバイスされていたのに・・・。経験の浅い二人はやけに急になってくる斜面をずんずん進んでいった。すると岩と草付の急な壁に行き当たった。少し思案するも木の根にしがみつきながら前進する。ルートをはずれた事は認識しながらもうっすらと踏み跡があるのでこのまま行ってしまおうということになる。急な草付を恐る恐る登っていく。かなり冷や汗ものだ。支尾根までもう少し、最後のピッチはロープを出しようやく安定した場所に立つ事ができた。ここから約30分ほど藪こぎをして9:45ようやく北鎌の稜線に出ることができた。ヤッター!と妙な達成感と疲労感が。出てきた場所は北鎌コル北東のピークらしい。早くも今回の山行の核心部であった。少し休憩して気分を落ち着かせ北鎌のコルへ向う。途中懸垂下降を1回。コルはテント1?2張り可能な安定した場所であった。
さっきのルートミスで約3時間ほどロスしてしまった。

あせってもしょうがないので落着いてゆっくり歩くことにする。コルからは踏み跡も明瞭で(さっきのに比べるとホントに歩きやすい!)じわじわと高度を上げていく。12:00に2749mの稜線に出た。幕営できそうな場所はかなりある。ついでにゴミもたくさんある。稜線には出たが周囲はガスっていて展望はきかない。ルートがよく分からなくなったら稜線上を行こうと確認し、いよいよ岩稜帯歩きに突入。ここから先も踏み跡はわりと分かりやすく切れ落ちた岩稜のトラバースや少し難しいクライムダウンなどをこなしていく。




どの場所も一歩間違えれば奈落の底へ落ちていくので緊張感のある場面ばかりだ。やがて少し難しいチムニーを越え14:10独標に到着する。無理をすれば山頂までも可能そうだが、暗くなるとルートが分かりにくいのでどこかでビバークしてもいいかもしれない。
時折、オコジョやサルが顔を出し楽しませてくれる。この稜線上に私達二人しかいないというのも贅沢なものである。次々と現れる岩峰を巻いたり登ったりするも、だんだんと疲れがでてきてペースダウンしていく。16:45頃あるピーク直下の肩にテント1張り可能なスペースをみつけた。今夜はここでビバークすることにする。断崖絶壁の上だがテントの中に入れば暖かく居心地は良い。幸い風もなく小雨が時折ぱらつく程度で快適な一夜を過ごすことができた。水もかなり余分に持っていたので、米を炊き味噌汁、コーンビーフと葱の炒め物という豪華な夕食を食べることができた。
8月26日寝過ごして4:30に起床。スープとお茶を飲み行動食で簡単に朝食をすませる。行動用の水は1人500ml+α。ビバーク地を5:50に出発。ピークにいたのでいきなり急な下りからはじまる。天気はあいかわらず曇りだが視界は昨日よりひらけている。千丈沢側の巻き道を進んで行く。遠くから見ると難しそうな場所も近づくと案外無理なく登れる場所が多かった。7:15北鎌平に到着。この頃にはだいぶ雲が晴れてきて初めて槍の穂先を見ることができた。はるか先には西鎌尾根や硫黄尾根も見える。一晩ビバークした甲斐があったというものだ。
ここから先は稜線通しの岩塊地帯をゆく。まっすぐ聳える大槍の壁に一体どこを登るのかと思うが、ほとんど直線的に穂先へ向って進んでいけばよいみたいだ。残地シュリンゲをみつけ、そこが1つ目のチムニーであることが分かった。右側を巻くこともできそうだが、とりあえずチャレンジする。羽生田さんがまず登りシュリンゲを掴みながらうまくバランスをとってチムニーを越えた。次に木村の番。斜め左に向って2?3m程登ると足場があり、そこからシュリンゲを掴みながらトラバースするのだが、一歩踏出しだところでバランスが崩れこらえきれず落ちてしまった。落ちたのは2?3m程だが結構な衝撃でビックリしてしまった。そこで止まったから良かったものの、もっと下に落ちてたら大変なことだ。山頂を目前にして気が緩んでしまったのか、慎重さが足りずエイヤッで行ってしまった。かなり反省する。
体を動かしてみたら大丈夫そうだったので、もう一度チャレンジ。今度はお助け紐を出してもらい、なんとか登ることができた。続いて2つ目のチムニーを越える。こちらは慎重に行きなんなく越える。あとは階段状の岩を登るともうそこは槍の山頂であった。山頂からは周囲の稜線が良くみえる。長い道程であったがようやく山頂に立つことができた。いろんな事があったけど本当に来れてヨカッタと喜び合う。

槍岳山荘に下り、さっきの滑落でできた右膝のケガを応急手当し大休止する。バスの時刻を確認すると17:25上高地発のバスに乗れば今日中に東京に帰れるようだ。バスに乗りたい一心でかなりのスピードで下山する。足の裏が痛いが我慢して走るように降りていった。16:00過ぎに上高地に到着しビールで乾杯。バスと電車を乗り継ぎ予定通り東京に帰ることができた。
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