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- 執筆 :
- msc_kiroku2 2005-4-2 20:20
メンバー 清野CL 古屋 西館(記録)
朝8:00追浜集合、鷹取へ。フツウの山行記スタイルでは面白くないので、教科書風にまとめてみました。
■支点の設置
まずはビレイ用の支点設置の方法。いろんな技術書にあるのと違い、沢(だけでなく現場)では完全ではない支点を使う場合も少なくない。「これでもこうすれば支点になる」という知識を持っておきたい。
・不安定な支点 1 ブッシュ
まずブッシュ。しっかりした支点がなければブッシュを支点にすることも多い。ブッシュは(その状況にもよるけれど)上方向への引きは弱いが、横および斜め下方向へはある程度加重をかけることができる場合もある。ブッシュを支点とする場合は、まず
できるだけ多くを束ね
根に近い部分にスリングをかけ
フリクションをきかせること
がポイント。
最初の2点はよく語られるが、「フリクションを効かせる」について説明を。ブッシュにスリングをかけるときは、スリングを何重にも巻いて接触面積を広くとること。これによって「すっぽ抜け」の危険を減らすことにもなる(今回はブッシュがなかったので草で代用)。
・不安定な支点 2 灌木
灌木でのビレイもブッシュと状況は同じ。背丈があるだけに「できるだけ根に近い部分」にスリングをかけるのは必須となる。とはいえ、高い場所に支点が欲しい時は枝を束ねて支点にすることもある。
この時「灌木が生きている」ことは重要。枯れ木はまったく支点として使えない。
さて灌木にもいろんな種類があるので、効くもの、効かないものについてはあらためて書きます。
・流動分散
というわけで、安心できない支点を利用するときは複数の支点を設置し、流動分散する。流動分散には、各支点にビナをかけ、それに別の(長い)スリングをかけ、それにビナやビレイ器具)をかけて使う。
流動分散をするには一般的な方法(写真)の他、長い方のスリングを折り返す「余り返し(写真)」という方法もある。
いずれにせよ、この流動分散用のスリングは長めのものが必要。清野さんは2.4mのテープスリングを使用しています。これはお助けヒモ代わりにもなるので、便利です。
・簡単な固定法(巻きつけ結び)
立木などにロープを固定するとき、写真のようにする方法がある。ハーフヒッチのようだが、これは独特。けっこう強度があるし、何度もねじることでゆるみもない。固定に時間がかからないし、はずすのも簡単です。
■ボディビレイと支点ビレイ
リードをビレイする時はボディビレイが基本(滑落時に身体で衝撃を吸収できるため)だが、セカンドをビレイする時は衝撃荷重もそれほどではないため、支点ビレイのほうが有利な場合も多い。ボディビレイでは自身がビレイシステムの中に組み込まれてしまうが、支点ビレイではセカンドの加重は自身にかからない。
・ビレイ支点を作る 1
いちばん簡単なのは、流動分散したスリングにセルフビレイをし、その同じ部分にビナとスリングをかけ支点を作るもの。セルフビレイで使ったスリングと同じ長さのものを、ビレイようにかますと、ボディビレイとほぼ同じ位置にビレイ器具が来る
・ビレイ支点を作る 2
支点からビレイしたい場所まで距離がある時。メインロープを支点にビナがけし、(変形)プーリンノットでセルフビレイとビレイ用支点を作る方法がある。距離の調整が一発で決まるので、覚えておくとラク。
■ビレイシステムからの脱出
たとえば2人のパーティでリードビレイをしていて、トップが抜き差しならない状態になった。助けに行こうにも、ロープから手を離すをトップは滑落してしまう……。そんな時に、自身をビレイシステムから解除する方法。これには
2本のスリング(プルージック用)
ヌンチャク、もしくはカラビナ
があればいい。以下に順番を追って説明する。
1 まず自分の手前のロープに「ロープを固定していないほうの手で」プルージックをかける。
2 ついで同様に自分の後ろのロープにもプルージックをかける。
3 両方のスリングの「効き」を確認して、間にヌンチャクやビナをかける。
4 徐々にビレイ中のロープをゆるめる。するといまかけたプルージック?ビナ?プルージック間にテンションは移り、自分は自由になる。
5 ビレイ器具やセルフビレイをはずし、トップロープをのぼるなり、その場までビレイなしで(!)登るなりして、トップを救出に向かう。
■懸垂下降
初心者も学ぶ技術ながら、一歩間違えると命の危険もある懸垂下降。支点の設置や確認、下降器のセットとロープさばきといった基本的な内容を復習した上で、新しい技術を習った。
・空中停止
懸垂下降中に下のロープがからまっているのを見つけた、等、降りる作業をいったん停止し、空中で自身を固定するための方法。ひとことで言ってしまえば「下降器をロック」すればいいのだが、確実にロックさせ、簡単に解除できること。そしてその作業中に「落ちない」ことが求められます。空中停止は「全図解 クライミングテクニック」堤 信夫・山と渓谷社 に詳しい図解が載っていますが(途中固定と書かれています)、これはダブルロープの「間に」下のロープを差し込む、という変則(というか堤さんが提唱する)方法。
今回はオーソドックスかつ的確な方法を学びました。手順ですが、通常の懸垂下降器(エイト環、ルベルソ、ATCなど)のほかに「補助で」ビレイループにカラビナをかけておきます。
ロープは下降器を経て補助のビナを通すのですが、この補助ビナは空中停止の段になってあらためてかけてもかまいません。このビナは下降器より内側(身体側)にかけるのだそうです(全図解?による)。
下降して止まるときにはそのビナでロープを折り返します。以下はその後の手順です。
1 片手(利き手じゃないほう)で下降中のロープを「ビナで折り返して」固定します。
2 折り返した(下側の)ロープを下降器の上のロープに結びます。
3 結び方は写真参照。3回ほど結んでOK。不安ならそこにビナをかければ万全。
4 解除するには、いまと逆の順番で。
5 ただし解除する際は、1の「ビナで折り返した部分」を左手で押さえ、固定しておくこと。
6 最後に利き手でロープを後ろ手に回し(懸垂下降の姿勢です)、左手を離せば、また下降できます。
・登り返し
懸垂下降に限らず、ロープを登り返す時の方法です。今回はダブルロープなので「シャント(ペツル)」とプルージックを使用しました。もちろんシャント2つならもっとラクですし、プルージック2本でも疲れますが同じように登れます。
シャントは「リングの部分(ビナをかける部分)」を自分側(岩側にしない)にし、ビナとスリングでハーネス固定します。プルージックはその下にかけ、ビナとスリングで足をかける「あぶみ」をつくります。
あぶみは立ちこむとき痛くないよう、テープスリングのほうがいいです。で、そこに足で立ちこんだら、ハーネスについたシャントを上げ、今度はシャント+ハーネスに体重をかけ、プルージックを上げてそこに立ちこんで……の繰り返し。けっこう疲れました。
■その他
必要なスリングの種類と本数、登攀具のふりわけの方法、ハーケン打ちの練習(というか、ハーケンの使い分け)もおこないました、。これはまた次回のWeb講習(?)で紹介します。