-
- 執筆 :
- iceclimber_msc 2021-12-31 6:20
山行報告書
日程:2021年12月29日〜31日
山域:空木岳池山尾根
山行形態:雪稜
メンバー:U
行動時間
12/29 7:30 駒ヶ根高原スキー場 8:45 林道終点 10:00 池山避難小屋分岐 11:30 マセナギ 12:30 大地獄 13:30 小地獄 15:30 ヨナ沢の頭
12/30 7:10 ヨナ沢の頭 10:45 駒石 12:50 ヨナ沢の頭
12/31 7:30 ヨナ沢の頭 10:30 2282m小ピーク 11:00 小地獄滑落点 15:00 小地獄ルート復帰 17:00 大地獄 18:50 マセナギ 21:40 池山避難小屋分岐 23:00 林道終点 24:15 駒ケ根高原スキー場
12/29 晴れのち雪
駒ケ根高原スキー場の駐車場に朝6時半に到着。食事を済ませて身支度を整え、7時半に出発。スキー場周辺は薄っすら雪がある程度で、2人程の踏み後あり。しばらく歩いたところで軽装の男性とすれ違う。どうやら林道終点にある展望台まで行った帰りのよう。林道終点から先もトレースは続いており、苦労せず歩くことができた。雪は徐々に深くなり、マセナギまで上がるころには膝下まで埋まる程になった。
その先の大地獄の鎖場はアイゼンをはいて通過。小地獄は、ルンゼを直登して尾根に上がる冬道と、ルンゼを渡って尾根の南面をトラバースする夏道があるのだが、トレースは夏道についておりそれに従う。このトラバースルートが非常に雪深く苦労させられた。ワカンに履き替えるのが面倒でしばらくアイゼンのまま歩いたが、容赦なく太ももまで埋まることが度々あり、結局途中でワカンに履き替えることに。天気も下り坂となり、雪が降りだしてきた。予定より時間がかかり、15時半にヨナ沢の頭に着。テント2〜3張ほどの平坦地があり、樹林のおかげで風もそれほど強くなく、なかなかの幕営適地であった。アルファ米とフリーズドライで食事を済ませて19時半に就寝。
12/30 雪
3時半頃、自ずと目が覚める。風が高巻く音が聞こえ、天候が荒れ気味だと感じさせる。携帯の電池がほとんどなくなっており、予備バッテリーで充電しようとしたが、なんと充電ケーブルを忘れていることに気づいた。池山尾根はほぼ全域が圏内で、電池さえあれば最終日のトラブル時に電話もできたはずなのだが、痛恨のミスであった。朝食を済ませ、夜明けを待って7時過ぎに行動開始。
雪は一晩で30〜40cmほど積もっただろうか。昨日辿ったトレースは完全になくなっていた。テントの周囲にもかなり雪が積もっており、ざっと雪かきをしていざ出発。ピストン装備で荷は軽いのだが、膝丈のラッセルが延々と続き、思うように進まない。3時間半かかってようやく樹林を抜け、駒石付近に達するが、ハイマツの岩稜帯には猛烈な地吹雪が吹き荒れ、進むこともままならない。この先山頂までは短く見積もっても1時間半以上かかる。到底無理だと判断し、ここで引き返すことに。2時間ほどかけてテントに帰着。相変わらず雪は降り続いている。テント周りを念入りに雪かきし、食事を済ませて18時半に就寝。
12/31 雪
5時起床。食事ののちテントを撤収して7時半に出発。雪は昨日からさらに30cmくらい積もっただろうか。まずは小地獄に向かって、尾根の南面をトラバースする夏道を進もうとするが、ワカンを履いていても太ももまで埋まる有様で、開始1分で無理だと判断する。登り返して、尾根上の冬道を進む。尾根上は風で雪が飛んでおり、膝下くらいのラッセルでかなり進みやすかった。尾根上にも所々に赤テープがありそれを辿って進んでいく。
2282mの小ピーク付近まで来たところで、赤テープを見失う。しばらくあたりをうろうろするがテープは見つからず。地図であたりをつけ、南東方向の緩斜面を下って夏道に合流することにする。しばらく下り、無事に夏道の赤テープを見つけてほっと一安心。夏道はここから進路を北に変え、小地獄のルンゼに向かって斜面を水平にトラバースするのだが、ここで痛恨の道間違い。トラバースしている間に無意識に標高を下げてしまい、夏道からかなり逸れてしまっていたようだ。そのまま小地獄のルンゼに行き会い、これを無理やり渡ろうとしたところでさらなるミス。ルンゼに下ろうと踏み出した斜面は、草付きの上に薄っすらとしか雪が載っていない状態で、ワカンの踏ん張りが効かず転倒。そのまま腹這いの格好で新雪の上をズブズブと30mほど滑り落ちてしまった。落ちる際に右顔面を雪面に擦り付けて傷を負い、眼鏡も雪にのまれて行方不明となったが、手足は怪我無く済んだのは不幸中の幸いであった。
さてここからルンゼを脱出するまでが大変であった。まずは両岸の尾根に這い上がろうと試みるが、どちらの岸も尾根に上がるところが岩や草付きの急傾斜になっており、雪が薄く不安定であった。無理に這い上がろうとすれば、先ほどの滑落の二の舞になりかねない。結局のところ、ルンゼを詰め上げるしかないという状況であった。しかし、滑落前に道間違えをしていたせいで、本来のルートに復帰するためにはかなりの標高差を登らなければならなかった。膝上まで埋まる積雪にかなりの斜度。一歩一歩ステップを踏みしめながら、1分間に1〜2歩という遅さで這い上がっていく。正直、雪崩が来ようものなら一巻の終わりである。できることといえば、流心をなるべく避けて両岸の近くを進むことくらい。どうか雪崩れませんようにと祈りながら黙々と斜面を登っていく。
15時過ぎ、4時間近い苦闘を経てようやく本来の登山道の尾根に這い上がる。疲れ切っていたので長めの休憩。食料や燃料はまだ1泊できるだけの余力があるのだが、少なくとも大地獄を越えなければビバーク適地はない。疲れた体に鞭を打って、アイゼンに履き替え、大地獄の鎖場を越える。登りの時よりも雪が多いからか、はたまた疲れているせいか、どの鎖場もかなりいやらしく感じられた。大地獄の先は傾斜の緩い尾根で、雪が吹き溜まってラッセルが非常につらい。日も落ちて暗くなり、ヘッドライトを頼りに膝上まで埋まりながら進んでいく。
マセナギ到着が18時50分。ここは平坦でビバーク適地である。しかしながら携帯は電池切れで使えない。最終連絡を越えてしまうと、会の皆にも両親にも多大な心配をかけてしまう。とにかく今日中に何としても下山しようと心に決めた。暗いのと眼鏡がないのとで赤テープを見つけるのが困難で、地図とコンパスを頼りに進むしかない。相変わらずの膝丈のラッセルにも苦しめられ、池山避難小屋分岐に着いたのが21時40分。ここまで降りるとかなり雪も減り、トレースが見えるくらいになる。道に迷う心配もなくなり安堵する。疲れた体に鞭打ってさらに2時間半歩き、24時15分に駒ケ根高原スキー場に着。すぐに車の充電器に携帯をつなぎ、下山連絡を入れ、実家と清野さんに電話。皆さんにご心配をかけてしまい、申し訳なさでいっぱいであった。
今回の件は、ルートファインディングミスと滑落が重なり、あわや遭難という事態であった。多少の擦り傷程度で帰ってこられたのは、本当に幸運であった。
この2年ほど、コロナ下で雪山にまったく行っていなかった。ここ最近でコロナが落ち着きを見せ、また精力的に活動したいと気が急いてしまった面があったかもしれない。自分の力を過信し、また雪山への畏怖の念を忘れてしまっていたと感じる。真摯に反省したい。
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日程:2021年12月29日〜31日
山域:空木岳池山尾根
山行形態:雪稜
メンバー:U
行動時間
12/29 7:30 駒ヶ根高原スキー場 8:45 林道終点 10:00 池山避難小屋分岐 11:30 マセナギ 12:30 大地獄 13:30 小地獄 15:30 ヨナ沢の頭
12/30 7:10 ヨナ沢の頭 10:45 駒石 12:50 ヨナ沢の頭
12/31 7:30 ヨナ沢の頭 10:30 2282m小ピーク 11:00 小地獄滑落点 15:00 小地獄ルート復帰 17:00 大地獄 18:50 マセナギ 21:40 池山避難小屋分岐 23:00 林道終点 24:15 駒ケ根高原スキー場
12/29 晴れのち雪
駒ケ根高原スキー場の駐車場に朝6時半に到着。食事を済ませて身支度を整え、7時半に出発。スキー場周辺は薄っすら雪がある程度で、2人程の踏み後あり。しばらく歩いたところで軽装の男性とすれ違う。どうやら林道終点にある展望台まで行った帰りのよう。林道終点から先もトレースは続いており、苦労せず歩くことができた。雪は徐々に深くなり、マセナギまで上がるころには膝下まで埋まる程になった。
その先の大地獄の鎖場はアイゼンをはいて通過。小地獄は、ルンゼを直登して尾根に上がる冬道と、ルンゼを渡って尾根の南面をトラバースする夏道があるのだが、トレースは夏道についておりそれに従う。このトラバースルートが非常に雪深く苦労させられた。ワカンに履き替えるのが面倒でしばらくアイゼンのまま歩いたが、容赦なく太ももまで埋まることが度々あり、結局途中でワカンに履き替えることに。天気も下り坂となり、雪が降りだしてきた。予定より時間がかかり、15時半にヨナ沢の頭に着。テント2〜3張ほどの平坦地があり、樹林のおかげで風もそれほど強くなく、なかなかの幕営適地であった。アルファ米とフリーズドライで食事を済ませて19時半に就寝。
12/30 雪
3時半頃、自ずと目が覚める。風が高巻く音が聞こえ、天候が荒れ気味だと感じさせる。携帯の電池がほとんどなくなっており、予備バッテリーで充電しようとしたが、なんと充電ケーブルを忘れていることに気づいた。池山尾根はほぼ全域が圏内で、電池さえあれば最終日のトラブル時に電話もできたはずなのだが、痛恨のミスであった。朝食を済ませ、夜明けを待って7時過ぎに行動開始。
雪は一晩で30〜40cmほど積もっただろうか。昨日辿ったトレースは完全になくなっていた。テントの周囲にもかなり雪が積もっており、ざっと雪かきをしていざ出発。ピストン装備で荷は軽いのだが、膝丈のラッセルが延々と続き、思うように進まない。3時間半かかってようやく樹林を抜け、駒石付近に達するが、ハイマツの岩稜帯には猛烈な地吹雪が吹き荒れ、進むこともままならない。この先山頂までは短く見積もっても1時間半以上かかる。到底無理だと判断し、ここで引き返すことに。2時間ほどかけてテントに帰着。相変わらず雪は降り続いている。テント周りを念入りに雪かきし、食事を済ませて18時半に就寝。
12/31 雪
5時起床。食事ののちテントを撤収して7時半に出発。雪は昨日からさらに30cmくらい積もっただろうか。まずは小地獄に向かって、尾根の南面をトラバースする夏道を進もうとするが、ワカンを履いていても太ももまで埋まる有様で、開始1分で無理だと判断する。登り返して、尾根上の冬道を進む。尾根上は風で雪が飛んでおり、膝下くらいのラッセルでかなり進みやすかった。尾根上にも所々に赤テープがありそれを辿って進んでいく。
2282mの小ピーク付近まで来たところで、赤テープを見失う。しばらくあたりをうろうろするがテープは見つからず。地図であたりをつけ、南東方向の緩斜面を下って夏道に合流することにする。しばらく下り、無事に夏道の赤テープを見つけてほっと一安心。夏道はここから進路を北に変え、小地獄のルンゼに向かって斜面を水平にトラバースするのだが、ここで痛恨の道間違い。トラバースしている間に無意識に標高を下げてしまい、夏道からかなり逸れてしまっていたようだ。そのまま小地獄のルンゼに行き会い、これを無理やり渡ろうとしたところでさらなるミス。ルンゼに下ろうと踏み出した斜面は、草付きの上に薄っすらとしか雪が載っていない状態で、ワカンの踏ん張りが効かず転倒。そのまま腹這いの格好で新雪の上をズブズブと30mほど滑り落ちてしまった。落ちる際に右顔面を雪面に擦り付けて傷を負い、眼鏡も雪にのまれて行方不明となったが、手足は怪我無く済んだのは不幸中の幸いであった。
さてここからルンゼを脱出するまでが大変であった。まずは両岸の尾根に這い上がろうと試みるが、どちらの岸も尾根に上がるところが岩や草付きの急傾斜になっており、雪が薄く不安定であった。無理に這い上がろうとすれば、先ほどの滑落の二の舞になりかねない。結局のところ、ルンゼを詰め上げるしかないという状況であった。しかし、滑落前に道間違えをしていたせいで、本来のルートに復帰するためにはかなりの標高差を登らなければならなかった。膝上まで埋まる積雪にかなりの斜度。一歩一歩ステップを踏みしめながら、1分間に1〜2歩という遅さで這い上がっていく。正直、雪崩が来ようものなら一巻の終わりである。できることといえば、流心をなるべく避けて両岸の近くを進むことくらい。どうか雪崩れませんようにと祈りながら黙々と斜面を登っていく。
15時過ぎ、4時間近い苦闘を経てようやく本来の登山道の尾根に這い上がる。疲れ切っていたので長めの休憩。食料や燃料はまだ1泊できるだけの余力があるのだが、少なくとも大地獄を越えなければビバーク適地はない。疲れた体に鞭を打って、アイゼンに履き替え、大地獄の鎖場を越える。登りの時よりも雪が多いからか、はたまた疲れているせいか、どの鎖場もかなりいやらしく感じられた。大地獄の先は傾斜の緩い尾根で、雪が吹き溜まってラッセルが非常につらい。日も落ちて暗くなり、ヘッドライトを頼りに膝上まで埋まりながら進んでいく。
マセナギ到着が18時50分。ここは平坦でビバーク適地である。しかしながら携帯は電池切れで使えない。最終連絡を越えてしまうと、会の皆にも両親にも多大な心配をかけてしまう。とにかく今日中に何としても下山しようと心に決めた。暗いのと眼鏡がないのとで赤テープを見つけるのが困難で、地図とコンパスを頼りに進むしかない。相変わらずの膝丈のラッセルにも苦しめられ、池山避難小屋分岐に着いたのが21時40分。ここまで降りるとかなり雪も減り、トレースが見えるくらいになる。道に迷う心配もなくなり安堵する。疲れた体に鞭打ってさらに2時間半歩き、24時15分に駒ケ根高原スキー場に着。すぐに車の充電器に携帯をつなぎ、下山連絡を入れ、実家と清野さんに電話。皆さんにご心配をかけてしまい、申し訳なさでいっぱいであった。
今回の件は、ルートファインディングミスと滑落が重なり、あわや遭難という事態であった。多少の擦り傷程度で帰ってこられたのは、本当に幸運であった。
この2年ほど、コロナ下で雪山にまったく行っていなかった。ここ最近でコロナが落ち着きを見せ、また精力的に活動したいと気が急いてしまった面があったかもしれない。自分の力を過信し、また雪山への畏怖の念を忘れてしまっていたと感じる。真摯に反省したい。
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