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msc_kiroku2 2005-3-21 23:40
足拍子岳縦走(会山行) 3月18日?21日 西館
メンバー 清野CL 門脇SL 山本 野口 西館章子 西館彰芳
 素晴らしい雪山でした。
 18日夜に土樽駅へ入りステーションビバーク。今回は私たち6名以外に1グループと1名がビバーク。西館彰芳は不覚にも車酔いでダウン。深夜0時過ぎから始まった酒宴もウーロン茶を飲んで意気上がらず。3時には就寝して翌6時半頃起床、身支度を整えて7時出発。毛渡橋で魚野川をまたぎ、清水トンネルの上部から足拍子山頂を目指して北上します。この日は低気圧の接近もあって最初は軽い吹雪状態。視界は50m程度か? アイゼンにワカンという「お子さまランチ」装備で登りを開始。尾根沿いに樹林帯を急登するものの、先週、先々週の谷川とはまったく雪が違う。ラッセルも快調に、10時には1142m近辺の開けた場所に到着しました。
 ここで1本とった後、細い尾根を真北に向かいます。左手に足拍子の斜面が開けて見え、ここには2人でコンテで登るパーティが見えます。斜面は比較的急で、これをこけたらかなり下まで行きそうだなぁ、と気持ちを引き締める。樹林帯を抜けたところで、こちらもザイルを出しコンテ(というより縄で連行)で高度を稼ぐ。小さなピークを越えたところで、なぜか2人パーティと交差、ビレイ君は動く気配がないので、ちょっと停滞。話を聞くと、どうもここで引き返すらしい。ビバークの用意がない、ということで撤退してゆきました。
 こちらは先へ先へ。しかしこの辺からピークが連続するようになり「やっと登った!」と思うと次のピークが見える。やる気が失せること甚だしい。3度目の正直、というか3度目のピークでやっと足拍子が見える。この山頂、けっこう痩せ尾根に雪稜が吹き溜まっておりあたふたするものの、13時半無事足拍子岳山頂1408mに到着。
 さてここからは縦走だし、と思ったのもつかの間。痩せ尾根のアップダウンが始まる。いま地図を見てるからそう言えるのだが、現場では結構緊張の行軍です。途中からトップを山本さんが務め、ルートを開拓。尾根上には雪がかぶり、しかもハング気味。ピッケルでステップを切りながら登るのですが、時間がかかる。2ピークほどこうやってこなし、キツい頂へ登ったところが「クロガネノ頭」。そろそろねぐらを探す時間となりました。
 実はこの辺には「わらじの会」の会報に登場する「ホテルクロガネ」という快適なテン場があるらしい。たしかにクロガネノ頭を越えたところで傾斜はゆるやかになるが、天幕を張る気になるほど平らでもない。「もう少し先になるんじゃないか」「あんまり行くとヤッベーぞ」なんて会話が交わされる中、15時半でタイムアウト。結局小さなピークの頂上を整地してテントを張りました。
 さてその夜、12時過ぎに起きた西館が、仮設トイレにしゃがみ込んでふと前を見ると……亀裂が……。その先を目で追ってゆくと、テント設営場所の脇を通って頂の向こうまで続いている。
「……」
「清野さん……、ちょっといいですか?」
「……なに?……」
「テントの外に亀裂があるんですが……」
「どんなの?……」
「トイレから、テントの向こうまでずっと……。大丈夫ですか?」
「……うーん、大丈夫だと思うよ。わかんないけど」
 大丈夫だけど、わかんない……。納得がいかずにボーッとしていると、門脇さんが起き出して、外でタバコを一服。戻ってきて
「西、心配ない。寒いし雪も締まっている」
 その一言で安心して眠るものの、亀裂の向こうを行軍する山スキーのグループをどきどきしながら眺めるという夢に、西館はその晩悩まされたのでした。

 翌朝6時、とるものもとりあえずトイレに行って確認すると、やっぱり見事に断層が続いています。まあ朝まで保ったんだし、と朝食をとり撤収。7時半には一晩お世話になったピークを下る。振り返ると……約10mの切れ込みが山頂から真下に続いています。これがパッカリと切れ落ちなくてよかった。と、胸をなで下ろしたのもつかの間、本日は延々と痩せ尾根を縦走することを知らされます。
 昨日と違いまったくのドピーカン。西館は下着の長袖Tシャツにレインのアッパーだけだというのに、汗が噴き出すほど。眺めもよく、滑落したらどうなるかとてもよくわかる状態。その斜面を昨日に続き、縄につながれてトラバースが続きます。先頭は清野さん、門脇さん、山本さんが交代で務める。昨日と比べれば平面といっていいほど高低差がないのに、西館×2、野口さんはそれぞれの事情で徐々に足取りが重くなってゆきます。荷物の重さに加え、雪がまとわりつく感じで疲労感は無雪期とは比べモノになりません。加えワカンでの斜面トラバースは、蹴りこみが難しく脚力を非常に消費します。基本的に雪庇は南に張り出しているので、尾根の(進行方向)左側斜面頂上より1mほど下をトラバースしてゆくのですが、急斜面のため右足の蹴りこみと左足の置き場所が微妙に段差があって、そのバランスで疲れてゆくのがわかります。
 極めつけは清野さんリードで通過した斜面(進行方向)右手のトラバース。ほぼ垂直、といってもたぶん60度ほどに切り立った斜面を20mほど斜面に正対して抜けるのですが、アイゼンの前爪を蹴りこむ高さが、一歩ごとに20センチほど下降します。右手のピッケルを雪壁に打ち込みながら、支点となる足を軽く曲げ、もう一方を雪面に打ち込む作業が続きます。もちろんロープはフィックス、たしかこの時はタイブロック。終了点の灌木でビレイする清野さんの位置までたどり着くまでの時間が長かったこと。そうこうしながらも、コマノカミノ頭(1464m、10:20)、シシゴヤノ頭(1472.6m、12:15)を越え、ここらで目的地の蓬ヒュッテが間近に見え始めます。なだらかに続く稜線には、山スキーヤーの姿が見え、そのうちスキー跡を歩くようになったころ、後方の門脇さん、清野さんから戻ってくるように指示があります。
 「明日は天気が下りそうだから、ここから下りるぞ」
 門脇さんの指さす先は崖っぷち。でも覗き込んでみると、急斜面ながらなだらかに平になってゆくのが見えます。その先に絶好のテン場が見えます。斜面を200mほどまっすぐに下り、広々とした平らな場所にたどり着いたのが13時30分。本日は早くもテント設営となります。
 なにしろ天気がいい。日差しが暑い。マットを持ち出して昼寝したいような気分。みんなテントの周辺でのんびりとたたずんでいます。その顔を見ると……。もうすでに真っ黒。中でも山本さんはニットキャップをかぶっていたため、「千と千尋〜」の「カオナシ」のように焼けている。慌てて顔を隠しておでこを集中的に焼くものの、その効果のほどは……。
 早めの夕食、もう6時ころにはすることもなく、あるたけの酒もほぼ飲み終え、7時過ぎには就寝。さてその夜、門脇さんの予言どおり、雪が降り始めました。夜を徹して降り続けた雪は、朝には50センチほどの新雪で周囲を包み込み、さらに視界も50メートルほどとかなり劣悪な感じ。朝7時に下降を開始しました。
 トップは門脇さん。その門脇さんが突然消える。目の前に2メートルほどの崖があったのですが、まったく見えなかったため。もっともそれ以降は順調に下ります。後ろを歩いていたのですが、尾根を選び、立木周辺の雪の洞を避け、しかも足裏の雪の変化を確認しながら進んでゆきます。高度を下げるにつれ雪もおさまり、沢筋に出ると天気も回復してきました。トップを山本さんが務め沢へ滑落しないよう歩を進めます。もう大丈夫、という段になり西館、西館章子、野口さんの順でトップを務めますが、昨日のスキーヤーの轍がありそれをトレースする形で迷うことなく歩けます。振り返ると山の上はまだ吹雪。しかし樹林帯に入ったころには暑く感じるほどに天候は変わっていました。9時にはワカンをはずし、高速沿いの道を経て9時半には土合の駅へ。途中スキーヤーや山屋さんたちとすれ違うが、こちらはもう充分冬山を満喫して、次は風呂。10時の開店を待ち町営の「岩の湯」に浸かり、湯沢駅前のへぎ蕎麦屋「中野屋」で最初の反省会、以降和光市で第二反省会を経て、それでも5時過ぎには解散しました。
 ナイフリッジ脇のトラバース、吹雪く中でのラッセルと下降と、冬山らしさを満喫できた足拍子。清野CLにはもう来年のプランができあがっているようでした。

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