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山行記録 カレンダー
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msc_kiroku2 2006-1-8 23:50
2006年1月6日(金)?8日(日)
メンバー 中山CL(CL・食当) 西舘章子SL 池田 須藤(記録)

 6日新宿20時発スーパーあずさ33号に4人全員乗り込んでの出発。前日、西舘(彰)さんの足にトラブルが起き、急遽参加見合わせとなってしまった。前年末に西館邸にて打ち合わせを行い準備万端で望み、皆で楽しみにしていたので残念。
列車の中で、人員減になったことと、雪が予想より多そうなことから、いくつかのルートオプションの説明を中山さんから受ける。他、須藤がアイゼン装着方法を教えて頂いたりする。
 小淵沢駅に10時前に着く。コンビニに西館章子さん(以下章子さん)と池田さんが買い物に行くも早くも閉店。こんなに早く閉まるのに"コンビニ"というのだろうか? 待合室にて例の如く一杯やって就寝。が、その後に列車が3,4本到着する度に登山客が下車しては、同様に待合室で仮眠、その支度のためのゴソゴソ音で眠れない。それは仕方のない事ではあるが、一人ひどいのがいた。コッヘル、バーナーで食事を作っている。控えめにやってもら
えればいいのだが、コッヘルを床に落としているとしか思えない金属音を始終鳴らし続ける。いったいどういう神経をしているのだろうか?結局私は一睡もできず、他の3人もよく眠れなかった。不快な輩はどこにでもいるが、人間が最低確保しなければならないことを邪魔するのだけは止めてもらいたい。一発怒鳴っておけば良かったと今更思う。
 ともあれ翌朝5:15分起床。朝食を摂り、お湯を沸かし各人のテルモスへ入れた後小海線に乗り込み、車内にてスパッツ等登山準備を整える。野辺山駅にて下車し、予約を入れておいたタクシーを電話で呼び、20分ほどで横岳登山口に着く。タクシー車内から見た樹景は、針葉樹ばかりで、あまり幹が太くない。昔、近くの火山の溶岩流で焼け流されたのだろうか?
 タクシーを登山口で下車後7:15、直ぐに入山。入山とはいっても、未だあたりは別荘地で登山道ではない。1、2度軽い道探しをして、本当の(?)杣添川沿いの登山道へ入り、左岸を300m程歩いて右岸へ跨ぐ。樹相は、ここまでの樅の木々のみからダケカンバも混じるようになり、それらの幹の太さも力強い直径30cm程度のものが見られるようになる。川を跨いで直ぐ急な斜面があり、新人である私は初めてピッケルを突いて上がり、そこからは杣添尾根を登っていく。始めのうちは、アイゼン無しで登っていたが、入山約2時間後、9:20にアイゼンを装着する。装着して歩きはじめて、直ぐにその威力に驚かされた。それまですべり気味だった斜面に確実に食いついてくれる。すべることに気を取られることが全くない。初心者ではない人にとっては当たり前のことかもしれないが、私にとっては凄いことに思えた。しかし、20分程すると膝に負担がかかり始めた。確実に食い込んで、すべる"あそび"が無いため脚を降ろした時のショックがストレートに膝にくる。それを見計らったように中山さんに「少しガニ股気味に歩くと楽だ。」と言われ、そうしてみるとその通りで本当に楽になった。
 さらに登り続け、しばらくしたところでトレールの右側に3,4m四方の雪の整地後が見れた。中山さんによれば、年末あたりの大雪で前へ進めぬ状況になり止む無くここでテン泊したのだろうとのことだった。まだ高度をそれ程上げていない処と思われるので相当の降雪だったのだろう。それを裏付けるかのように、このあたりまではふみ後が何とか残っていたが、それ以降は見つけられなくなった。そしてそれからは悪戦苦闘の連続である。雪の落とし穴にズボズボと体が落ちる。トップを行くあの中山さんが、ひっくり返ってザックを投げ出して起き上がり、抜け出す様を見たときには本当に驚いた。こんなにベテランの人でもこうなることがあるんだ、と。
 中山さん以外は2年目の章子さん、新人の池田さんと私であるからトップは必然的に中山さんが行わざるを得なく、大変な思いをされたと思う。踏み後が全く見られない素地の雪原から、硬めの処、下にある踏み後をストックを使って辿っていく技術は長い経験のなせる術なのだろう。私には神業としか思えなかった。中山さんの後を進んでも、脚はとられ、穴に落ち込み腰、胸まで埋まり登攀というよりも、全身を使って"もがく"感じで進み、凄まじいエネルギーを使う。それでも暫くしてからは、見よう見真似ねで3人も加わり4人で順繰りにトップでラッセルをさせてもらうようになった。
 踏み後のない雪面でも、緑の樅の木の葉が見えるところは落とし穴が待ち構えていること、周囲より何となしに低く見える処は比較的雪が固いことなどが、経験、感覚的に少しづつ分かってくる。そういう感が当たった時は嬉しいもので、はずれた時は「うわっ!またか!!」という感じである。穴にはまった時や斜面がきついところでは、ピッケルを横にして両手で掴みながら体を押し上げる。しかし、こんなにきつい状況でも中山さんの気遣いとシャレ(というより○○○゛ギャグか?)には僭越ながら関心してしまう。「かかと(踵)が調子悪い人はいるか?」から"カカア(かみさん)と調子が悪いやつはいるか?"と言われた時には一瞬何を仰っているのか分からなかったが、数秒経ってから大笑いしてしまった。シャレは幾度も発せられたが、時には顔が引きつることもあった。たぶん雪山の寒さのせいでしょう。
 そうこうしながら5回の小休止の後、13時30分過ぎに標高2千5百メートルのあたりでテント場を見つける。目標の森林限界より少し下だが、体力、雪の状況から樅の木々が聳えるゆるやかな南向き斜面のそことした。雪面を整地して、テントを張り、必要な物をザックから出して全員テントに入る。15時過ぎから夕飯を作りだし、16時頃には食べ始める。メニューは中山流"こてっちゃん"入りほうとう鍋。ありきたりの表現でしかないが、本当に体が芯まであったまり、鱈腹食べ旨かった。こてっちゃんと鷹の爪がこの料理の核心であるように思う。
 それにしても、テント内の整理から鍋作りまで中山さん一人にやって頂いてしまったが、その手際の良さには目を見張った。予め外に蓄えた雪をテント内に取り込み、バーナーを2つ使って2段階で解凍、食材を順々に袋から出して鍋に入れていく一連作業には無駄な動きや停滞が全く無い。こんな小さなスペースでどうしてこんなにテキパキとできるのだろう? ここまでできるようになるには10年かかると聞いて、気後れしてしまう。
 17時半頃には食べ終わり、18時に就寝。自分が目を覚ました時は3時半だったが、風と舞う雪がテントをバタつかせ、木から雪の塊が落ち、外がどんな様子か否が応でも察しがつく。トイレに行きたいのだが、とても外へ出る気にはなれない。ずっと我慢して寝袋の顔を出す部分を最小限に絞り込んで、みの虫状態となり、誰かの鼾や章子さんの「何これー!」という寝言を聞きながら朝を待つことに決め込む。
 そうやってやり過ごすうち、5時に全員起床。2日目が始まる。
 餅入りラーメンを食べ、お湯をテルモスに入れる。テントをたたんで7:30出発。1回目8:10の小休止を少し過ぎたあたりだろうか、森林限界に出る。この日も始めのうちは中山さんがトップでラッセルを続けるが、途中から4人交替とする。ハイマツが微かに頭を出す稜線上を登るのは、とても気分がいい。森の中を歩くのもいいが、目の前にさえぎるものが無く、トレールも踏み後も何もなくただただ前へ伸びる白い稜線をつたって歩を進めるのがこんなに気持ちの良いものとは思いもよらなかった。
 凍てついた風が頬を打つし、勿論ラッセルも息があがる。けれどそれを凌駕するものがある。自分がトップを進んでいる時、このまま交替せずに頂上まで行ってしまいたい気分だった。2回目9:10の小休止の時、全員の行動食、ツェルト、若干の登攀具のみを一番小さな池田さんのザックに入れ、他はデポしていくこと、赤岳−行者小屋経由の縦走は止め、昨日と同じコースをピストンすることに決める。ここから尾根の先を眺めると、2,3百メートル先から傾斜がかなりきつくなる。小休止後傾斜がきつくなったあたりから、中山さんが1人でトップを登る。上がるにつれて積雪は薄くなり、ところどころ岩が剥き出している。ピッケルを杖代わりではなく、ピックを斜面に刺して登る処もでてくる。
 途中池田さんのアイゼンが右、左と2回外れてしまうアクシデントにも見舞われるが、落ち着いて一人で処理する。私と同様、章子さんもちょと息が苦しそうだったが、肝っ玉お姉さん(?)のど根性でひるむ気配は微塵もなく斜面にくらいついていく。中山さんと3人の距離が20〜30m程離れながらも、小休止を入れず11:50杣添尾根を登りつめ三又峰に立つ。そこで即座に中山さんが、3人の体力と池田さんのアイゼンの調子が今一つであることを考慮し、横岳、赤岳へは行かず、下山することを決める。
 峰上は曇天で風も強く長くは居られない。10分程の小休止後、下山する。
 下山は滑りやすく、慎重に降りる。樹林帯に戻ってからも登るときよりも、更に落とし穴に落ち込み易く、何度ももがく。
 16:15無事昨日の出発点である横岳登山口着。途中携帯で頼んでおいたタクシーとタイミングよく出会い、野辺山駅へと向かい、更に小海線にて野辺山駅へ。野辺山駅からスーパーあずさ30号に乗り込み、各々買い込んだ駅弁、ビール、酎ハイで反省会。
 今回の山行は結果的には目標である杣添尾根−赤岳−行者小屋の縦走は果たせなかった。けれど、それが敗退であるとは私には思えない。あくまでも外的環境が予定より厳しかったことによる計画変更である。雪が非常に多く、又夜の気温も中山さんでさえあまり経験のない寒さだった。そのため計画変更を余儀なくされた。けれども、その変更もいわゆる"想定の範囲内"だし、環境の厳しさ故、経験できたことも多く、大きい。個人的なことを言えば、何から何まで中山さんに頼りきりだったけれども、初めての"雪山"を無事経験することが出来、登攀技術、生活技術、そして雪山道具使用を学べたことは非常に意義深い。
 2年目の章子さん、雪山2度目の池田さんは、私程ではないかもしれないが、やはり充分に満足されており、車内反省会では早くも今年の沢登りなどに話が沸いた。新宿に着いて小田急線に乗り込み、一人充足した気分に酔いしれる。背中に80Lのザック、足にダブルブーツでママチャリをこぎ、肩で風をきって成城のお邸街を駆け抜ける。
「金は無いけど、おれは人生充実させてるぞ!」

以上


沢を登攀する中山さん。


三又峰で。


行程:1月6日 新宿駅発(20:00)?(スーパーあずさ33号)?小淵沢駅着(同21:54)    
7日 小淵沢駅発(6:11)?(小海線)?野辺山駅着(6:46)?(タクシー)? 横岳登山口より入山(7:15)?(杣添尾根)?テント場着(14時前)
8日 テント場発(7:30)?(杣添尾根)?三又峰(11:55)?(同尾根下山)?横岳登山口着(15:10)?(タクシー)?野辺山駅(15:30-16:57)? 小渕沢駅(17:29-17:41)?新宿駅(19:35)

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